[主な登場人物]
由美子先生:
白衣の下に何を持っているか、誰も知らない知られちゃいけない謎の女教師。
なぜか浜崎あゆみだけは許せないらしい。
浩一くん:
成績はトップクラスだが、いまいち詰めが甘いので1位にはなれない男子中学生。
実は三つのしもべがいたりするのだが、この話には一切登場しない。
最近の流行言葉は「ンコシ シケレラ」。
ルッグンにぶら下がったザク:
「機動戦士ガンダム」15話「ククルス・ドアンの島」で登場。
15話は作画のひどさで知られているが、ドアンの島にやってくるザクがルッグンにぶら下がって来るという事実は意外に知られていない。
名塚佳織:
リアル女子高生なヘタレ声声優。
だが、それがいい。
前回までのあらすじ
明治日本、乙女防人ス。
<<第4話 おいらは花のおちこぼれ!の巻>>
「……………はぁ」
自分の残された中学生生活の短さをかんがみ、思わずため息をつく浩一くん。
「ホント、どうすんだろこの機材……」
ぴゅう太JrやらRX-78やらマックスマシーンやら(全部動かない)で、8割はガラクタ以下の腐れハードばかりのこの部室ですが、それがクラブの消滅とともに処分されるのは仕方ないにしても、由美子先生が部費を勝手に流用して集めたわけのわからないソフトたちまで巻き添えにしてしまうのは非常にもったいない。
「よし!」
このままだと本当に歴史あるこのパソコンクラブが廃部になってしまいます。
浩一くんに残された手段はただ一つ。今からでも下級生を(無理矢理)この部に入部させることなのですが……。
「……でもなぁ……」
実は過去に何度か下級生の勧誘を試みた浩一くんでしたが、ほとんどの生徒は由美子先生が顧問というだけで逃げ腰になってしまうため、まったくうまくいきませんでした。
なにせ、赴任当日に学校の不良全員を金属バットでシメてしまったという逸話を持つ由美子先生ですから、それもしかたありません。
「ワイルド7にゃさからうな〜 命知らずの7人さ〜♪」
浩一くんの心中など気にする様子もなく、のんきに由美子先生が歌いながら現れます。
「ヘアピン!(ワーオ!!)ジグザグ!(ワーオ!!)急カ〜ブ〜♪」
当然コーラス部分もひとりでフォローです。
ワイルド7よりも由美子先生にはさからいたくない浩一くんでしたが、とりあえず由美子先生に相談してみることに。
「あの、由美子先生?」
「聞いてよ浩一くん!!」
「あ、はい…」
「『謀略運河』ってどういう意味?」
「………え!?」
突然の訳のわからない質問に唖然とする浩一くん。
「ルックスとか4トンとかはわかるけど、ハンペンとか終電ってどういう意味なのよ一体!?」
そのルックスとか4トンも全然わからない浩一くんは、由美子先生に身体を揺さぶられながらも抗うこともできない子鹿のような状態になっています。
「それに、なんで稲川淳二が載ってるのよ!?」
「……悲惨だなぁ」
こう返せばウィットに富んだジョークで済ますことができるのですが、なにせ浩一くんは「風雲!たけし城」も知らなければ、ストロング金剛がホモ男好きであることも知らない男子中学生。
そんなリアクションは望むべくもありません。
「だ、だからあの、由美子先生?」
「大丈夫。4月以降のことなら安心していいから!」
「え!?」
何も考えてないように見えても、由美子先生はちゃんとこのクラブの今後のことについて考えていたのです。
その配慮に思わず感動する浩一くん。
「それはそのときになってからのお楽しみってことで」
このとき、由美子先生の唇の右端がつりあがっていたのですが、感動している浩一くんはまったくそれに気がつきませんでした。
のんきに感動してる場合じゃないぞ、浩一くん!!
「今日は何を持ってきたんですか?」
「今回はこれよ!」
由美子先生が机に叩きつけたのは『はっちゃけあやよさん』。
「え、これって……?」
「そうよワタシはあやよさん〜♪」
「あやよさん!あやよさん!!」
脊髄反射でコールしてしまう浩一くんでしたが、元ネタはさっぱりわかっていません。
「ということで、今回はこれをプレイしてもらいま〜す」
手馴れた手つきで5インチドライブにフロッピーディスクをセットし、電源を入れます。
「え〜、またHARDのゲームですかぁ〜?」
「つべこべいわずにとっととやる!!」
前回のクイズでひどい目に遭っているので、ちょっと腰が引け気味な浩一くんに、思いっきり喝を入れる由美子先生。
とりあえず画面にむかった浩一くんですが、流れてきたBGMに思わず脱力。
「なんでBGMがチャイコフスキーの『悲愴』なんですか?」
「ある意味このゲーム自体が悲愴だから」
その答えにイヤーな予感を覚える浩一くんでしたが、とりあえず画面に集中することにします。
主人公は「沢島綾代(さわしま・あやよ)17才。おもちゃ屋でバイトする女子校生」。
「これって『女子校生』なところがポイントなんですよね。女子高生でなく」
「なんでそんな変な言い替えがまかり通ってるのかはよくわからないけどね」
世の中なんてそんなモンです。
「…何の脈絡もなくいきなりスカートめくりですよ!」
「ぱんつぅ!ぱんつぅ〜♪」
唐突に「PAPAPAPAPANTSU〜だってパンツだもんっ!」を歌いだす由美子先生に戸惑いながらも、ゲームを続ける浩一くん。
「なんでセーラー服でバイトしてるんですかね、あやよさんは?」
「そりゃセーラー服のほうがお客のウケがいいからよ」
「って、なんで由美子先生がセーラー服に!?」
さっきまで白衣姿のはずだったのに、今は完全にセーラー服(しかも夏服半そで)に変身している由美子先生に驚いて、浩一くんは思わず椅子から転げ落ちてしまいました。
「どう?私もまだ結構いけるでしょ?」
確かに由美子先生はまだ10代といっても通用するほど若く見えるのですが、浩一くんはブレザー姿の女生徒しか知らないためか、ほとんど感慨が湧かないようです。
「ぼ、僕はどっちかというと裸エプロンのほうが……」
そんなことを口に出そうものなら、本当に裸エプロンになりかねないので浩一くんは黙ってゲームに戻ります。
「画面のほとんどが絵で、その下にわずかにテキストが表示されるっていうのは、なんか字幕スーパーの洋画見てるみたいですね」
「浩一く〜〜〜ん」
「!! なっ、何やってるんですか!」
振り向くとスカートのすそをちらちらさせている由美子先生が。
「あやよさんと私、どっちが綺麗〜?」
「またかよ…」
そう思う浩一くんでしたが、そんなことを口に出そうものならどこからともなく取り出した金属バットで殴られるに決まっているので、毅然として答えます。
「由美子先生です!」
「やっぱり〜?」
「あたりまえじゃないですか」
「嬉しいこといってくれるわね〜」
珍しくマジメに照れる由美子先生に、浩一くんは良心の呵責を感じずにはいられませんでしたが、「ウソも方便」だということをこのクラブで身をもって学んでいたのでこの際は気にしないことにしました。
「だからそのスカートちらちらさせるのやめてください」
「え〜」
「…あの、……パンツ見えますから」
こういうシチュエーションには何度も出くわしている浩一くんでしたが、一向に慣れる様子がありません。逆にそういう浩一くんだからこそ由美子先生に好かれるわけなのですが。
「これ、水鉄砲編と手錠編でどう違うんですか?」
「まずは水鉄砲編からプレイしてみて」
言われるがままに「水鉄砲編」を選ぶ浩一くん。
おもちゃ屋の閉店間際にやってきた男は、あやよさんから水鉄砲を買うといきなり水をあやよさんに食らわせそのまま襲い掛かります。
「………なんか身もふたもない展開ですねぇ」
男はあやよさんを下着姿にした後に、さらに水鉄砲を乱射。
「これ、けっこうアニメしますね」
水に濡れて透ける下着がアニメしたり、襲われているあやよさんの胸が揺れたりして、かなりがんばっています。自分でプログラムを組むこともある浩一くんは、そんなところに妙に感心しています。
そこへ店長が戻ってきたため、男はそのまま逃亡。裸のあやよさんは助かりました。
「……なんかやな予感がする展開だなぁ」
浩一くんの予想通り、あやよさんに後ろから襲い掛かる店長。
「……やっぱりかい」
意外にちゃっかりしているあやよさん、Hの最中に時給の賃上げ交渉をします。
「……これってもしかしてチン上げとかけてるんじゃ……」
浩一くんの胸中を怖い考えがよぎりましたが、これについてはあまり深く考えないことにします。
「……由美子先生?」
「なあに浩一くん?」
「……これ、このオチで終わっちゃったんですけど?」
「Hも楽しんで時給も上がってホクホクなあやよさん」というオチに愕然としながらも、何の障害もなくゲームが終わってしまったことに得体の知れない不安をおぼえる浩一くん。
「こんな簡単に終わっちゃっていいんですか?」
「とりあえず次は手錠編よ」
「は、はい……」
こんなあっさり終わるゲームを由美子先生が持ってくるとは思っていなかったので、浩一くんは困惑したまま再プレイを開始します。
「手錠編」は、手錠を買った男がその手錠であやよさんを拘束して襲い掛かる、という展開に。
途中から使いまわしになったCGに、またいやな予感が浩一くんの脳裡をよぎります。
「……って、やっぱりかい!!」
帰ってきた店長にまたしても襲われ、水鉄砲編と同じオチで終了。
浩一くんにはどのへんがはっちゃけてるのかさっぱりわからないままです。
「あの〜、由美子先生?」
振り向くとなぜか下着姿の由美子先生が。
「浩一く〜ん、助けて〜」
「とにかく服着てくださいよ!!」
「だって、これ……」
由美子先生は、なぜか後ろ手を手錠で拘束されています。
「浩一くんが『あやよさん』に夢中になってる間にヘンな男がやってきて、私をこんな姿にしたのよ〜」
……ありえない。
そう思う浩一くんでしたが、このまま放置して逃げ帰るわけにもいかないので手錠を外してあげることにします。
「手錠のカギはどこですか?」
「ブラの中」
「ぶ、ブラって!!」
一瞬でゆでだこのように真っ赤になる浩一くん。
「カギはブラの中よ。ねぇ、とってよ浩一くぅ〜ん」
……なんか悪い夢を見ているような気がしてならない浩一くんですが、たしかに由美子先生の左胸が妙な形にもりあがっているのが確認できます。
「……もしかしてこれですか?」
「そうよ。早くとってぇ〜」
思わず目が点になる浩一くん。
「どど、どうやってとればいいんですか?」
「手を入れればとれるでしょ? ねぇはやくぅ〜」
「じゃ、じゃあ、とりますよ……」
胸をそらす由美子先生へそろりと手をのばす浩一くん。
……ゴクリ。
躊躇して固唾をのむ浩一くんに、さらに胸を突き出す由美子先生。
「はやくぅ〜」
「………う〜」
「浩一くぅ〜ん」
「………HIなテンションでWoooooooo わぁお!」
精神的に追い詰められた浩一くんの暗黒面が増大した結果、「突然わけのわからない歌を歌いだす」という癖が発現。
いきなり由美子先生を突き飛ばし、おもむろにブラに手を突っ込みます。
「やっ…、浩一くん、いきなりそんなダイタンな……」
といいつつも、まんざらでもない由美子先生。
すばやくカギを取り出した浩一くんは、自分の手のひらに収まるそれを見て意識を取り戻したようです。
「……あ」
一瞬の自失の後、浩一くんはすべての状況を把握したようです。
「う、うわああああああああ〜〜〜!!」
なぜか泣きながらダッシュで部室をかけぬけていく私のメモリアルな浩一くん。
「こ、浩一くん……カギを……」
予備のカギは用意してなかった由美子先生は、下着姿で後ろ手を手錠で拘束されたまま、ひとり残された部室で途方にくれるのでありました……。
(つづく)
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