[主な登場人物]
由美子先生:
担当教科は英語のはずなのに、なぜかいつも白衣をまとっている謎の女教師。
タバコは吸わないが、爆竹の火付け用に常にZIPPOを携帯している。
浩一くん:
エロゲ会社社長とエロゲ声優の間に生まれた、血統書つきのエロゲサラブレッドな中学生。
最近見ているアニメは「らいむいろ戦奇譚」。
カルチャーブレーンの遠藤氏:
江戸家子猫のゲーム番組(現在は「ゲームEX」)でいつもどうでもいいゲームの紹介をしている。
だが彼のありがたいお話をガキどもお子様たちは全然聞いていない。
あおきさやか:
コジコジもしくはラバピョンといいたいところだが、
現在のところ、ぶっちぎりで福島絹。
前回までのあらすじ
『177』の頃、刑法はまだ文語体だったことに想いを馳せる浩一くん。
一方、由美子先生は後半2クールがDVD化されていない『超GALS!寿蘭』に憤っていた。
<<第3話 機長、やめてください!の巻>>
放課後、とっとと帰ればいいのになぜか部室で物思いにふける浩一くん。
「だから、このままだとこのクラブが存続できないんだよなぁ……」
前回同様、クラブの行く末を考えている浩一くんですが、いまだに妙案が思い浮かびません。
このままだとクラブと同時にこの連載も終わってしまう可能性もゼロではないのですが。
「おいかけたいの〜迷路の〜先はとっておき〜のHeart beat time♪」
そう歌いながら「ヒステリックママ」をプレイしている、こういうところでは妙に器用な由美子先生がやってきました。
「……なんで『ありすインサイバーランド』なんですか?」
「コンパイルと倒産つながりで」
わかったようなわからないような返答に戸惑いを隠せない浩一くん。
「それはともかく、これを聴きなさい!」
第1話に借りてきてそのままになっているラジカセで、由美子先生はどこから取り出したのかわからないCDを再生しはじめます。
「……由美子先生、これは……」
「そうよ、『凛花』よ!!」
スピーカーから大音量で響く「防人となれ〜♪」に、うっとりと聴きいるふたり。
「……ホントスゴイですよねコレ……」
「これからのらいむ隊が楽しみよね……」
ということで、今回は『凛花』をBGMにして(当然エンドレスリピート)でお読みください。
(エルフHPのらいむいろコーナー「天乃原映写室」でOPムービーをDLすればOK)
「由美子先生、それよりもこのクラブのことで……」
「今回はコレをプレイしてもらいます!」
有無をいわさず、またどこからともなくゲームを取り出した由美子先生。
伊達に白衣は着ていないようです。
「『HARD社の社長が社員全員に面白いと認めさせたクイズ第1弾、君も成田に行って勝手にじゃんけんしよう』〜?」
あまりのタイトルの長さに浩一くんも困惑気味。
「そうよ。おそらくこれがもっとも長いゲームのタイトルとしていまだに君臨しているの」
「……た、確かに長いですけど…」
浩一くんはどうやら「社長が社員全員に面白いと認めさせた」が引っかかっている模様。
(社長が「認めさせた」ってのもなぁ…。それに、うちの父さんならこんなタイトル絶対つけないだろうし……)
浩一くんのお父さんは逆に短すぎるタイトルをつけることで有名なメーカーの社長だったのです。代表作は「赤」、「青」、「緑」、「群青色」など。
「とにかく細かいことは気にしないでレッツプレイよ!」
由美子先生はすばやくフロッピーディスクをセットし、浩一くんにプレイさせます。
「これってやっぱりクイズゲームなんですよね?」
「あたりまえじゃない。タイトルに『クイズ第1弾』って書いてあるでしょ?」
「じゃあ…」
「第2弾は出てません」
……機先を制された形になった浩一くんは、やむなく画面に集中することにします。
「要するにクイズに正解すればいいんですよね?」
「そゆこと」
このゲーム、クイズのジャンルはばらばらで、問題にはYES/NOの二択、もしくは三択で答えるパターンになっています。
そして1問正解すると16分割されているパネルのうち2枚をめくることができるのですが、どのパネルがめくれるかはルーレットの出目次第になっています。
要するに8問正解することができれば完成した1枚絵が拝める、というシステムです。
服を着ている絵の場合は、完成時に一気にすっぽんぽんになり、絵によってはアニメするものもあります。
「由美子先生?」
「なに?」
「…これってクイズに不正解でも、何事もなかったかのように次に進むんですが?」
そうです。
このゲームは、正解不正解に関わらずクイズがひたすら出題されていくのです。
「このまま適当に答えてたらどうなるんですか?」
「…やればわかると思う」
由美子先生はそういったまま沈黙を保っています。
(こういうときの由美子先生は美人なんだけどなぁ……)
余計なことを考えているうちにクイズの出題が止まりました。
「あれ?」
パネルがまだ半分しかめくれていない状態でしたが、よくわからないうちに次の絵に変わってしまいました。
「はいやりなおし〜」
「エエーーーーッ!!」
「あたりまえでしょ。パネルを全部めくらないとクリアは認められません!」
こういうオチだったのか、と妙に納得する浩一くん。
やはり、適当にクイズに答えているだけで終わるような生ぬるいゲームを由美子先生が持ってくるはずはなかったのです。
「クイズは結構いろいろなジャンルから出題されてますよね?」
「だから、全問正解しようと思ったら幅広い知識が必要よ」
クイズの難易度はそれほどでもないのですが、最初は次の絵に行くまで12問出題されていたのが、最終的には8問になります。
…ということは。
「はいやりなおし〜」
持ち前の根性と読みのよさで、浩一くんは画面の右にいたバニーちゃんが自由の女神に変わるまでは余裕でたどり着けるようになりました。
しかしそれから1ミスも許されない状況になってからというもの、由美子先生にやりなおしを要求されたのはこれで18回目。
「もうここまでやると、見たことのないクイズが出てくるほうが少ないんですけど…」
「当然目指すは正答率100%のノーミスクリアよ!」
「って、当初の目的と変わってんじゃん!!」
そうツッコミたいのを必死でがまんしながら、浩一くんはプレイを続けます。
「しかし微妙な絵ですねぇ…」
「この微妙さがHARDの味なのよ」
「あ〜! また季語の問題が!!」
基本的にさまざまなジャンルから出題されるのですが、一番厄介だと思われるのが俳句の季語の問題です。
その季語にひっかかって何度もリトライを余儀なくされていたため、浩一くんにとって季語はもはや鬼門でした。
「由美子先生、若葉っていつの季語ですか?」
「そんなの私が知るわけないじゃない。私、英語の先生だし」
明らかにあとづけくさい設定に、あえてツッコまない浩一くん。
一応クイズには制限時間があるので、それまでに選ばないと無条件で不正解に。
それだけはなんとしても避けたかったので、浩一くんは勘だけで答えを選びます。
「春だ!!」
「はいやりなおし〜」
19回目のリセット攻撃に、がっくりとうなだれる浩一くん。
ちなみに若葉は夏の季語ですが、それはどうでもいいです。
「…ところで由美子先生」
「なに?」
「さっきから気になってることがあるんですけど…」
申し訳なさそうに尋ねる浩一くんに、思わずそそられる由美子先生。
「なんでも訊いてごらんなさい?」
「これって、なんで『成田に行ってじゃんけん』なんですか?」
「……へ!?」
「だから、クイズと成田でじゃんけんにどんな関係があるんですか?」
「…ト、ト、トロピカルゼネレーション!!!!」
意味不明な絶叫をしたかと思うと、そのまま由美子先生はまっしろになってしまいました。
「え!? なんか悪いこと訊いちゃったのかなぁ?」
純粋に不思議がる浩一くんは当然、「アメリカ横断」してない世代。
「死に行く者の定めよ〜♪」
まだBGMとしてかかっていた『凛花』が切なく響く部室に、まっしろな由美子先生。
「…………ダメだこりゃ」
(オチがパクリなのは気にしないまま、つづく)
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