黒の断章

今をときめく(のかどうかはかなり微妙)「アボガドパワーズ」のデビュー作のサターン移植版です。

☆アボガドパワーズ

エロゲーマーでこの名前を知らない人はかなりモグリ的なほど、現在の知名度はなかなかのものですが、これが発売された当時はそれほどでもありませんでした(笑)

それにあの果物は正しくは「アボ『カ』ド」なのですが、ブランド名が「アボガドパワーズ」なのでしょうがないです。気にしないでください。

この作品は98用のエロゲ「涼崎探偵事務所シリーズ」の第1弾として96年に発売された作品のサターン移植版です。

元が98のDOS版なので、サターンの移植に当って次のような点が変更されています。

・フルカラーCGに総描き替え
・キャラクターボイスの追加
エロシーンの削除(涙)


今でこそ最低レベルのPCでもサターン並みの表現力を持っていますが、当時、16色がせいぜいで、CD-ROMも積んでないのが当たり前な98DOSからサターンに移植される場合、こういったパワーアップ移植は充分期待できるものでありました。
(実際、クオリティのあがってるものがほとんど)

☆ごっそりなくなってるよ!

ただし、このタイトルが発売されたのがX指定のレイティングが撤廃された後だったので、エロシーンはごっそりそのままなくなってます。

「演出でごまかす」とかそういうレベルでなくごっそりと。
ゴッソリトの棺〜♪(関東限定ネタ)

ま、元がオマケみたいなエロシーンばっかりだったので、作品としての重厚さみたいなものは削がれてはいないんですが、やっぱり「ただそのまんまカット」みたいなやり方はどうなんかなあ、と思います。

なまじストーリーの完成度が高いので余計にそういう部分に目が行ってしまうんですね。
哀しい限りです。

明らかに「子供向けじゃない」お話なんで、こういうシーンはあっても全然問題ないと思うんですけどねぇ…。

☆ストーリー

お話は、探偵・涼崎聡(すずさき・さとし)とその相棒の元精神科医・草薙(くさなぎ)のふたりを軸に進んでいきます。

彼らが越してきたマンションで起きた猟奇殺人事件。
その真相を追うのが当初の目的になります。

涼崎は、かつて追っていた事件で記憶を失ったという過去を持ち、その治療にあたったのが草薙という関係で、なんでか知りませんが二人で仲良く探偵やってます。

そんなダメ二人組をサポートするのが柏木明日香(かしわぎ・あすか)
彼女は涼崎の養女だったという経緯があり、涼崎を「お兄ちゃん」と呼んで慕っています。
(ただし、養女でなくなってからは無理に「所長」というようにしてますが)

マンションという閉じられた世界の中で、次々と殺されて行く住民たち。なかなか緊迫した状況で話は淡々と進んでいきます。いい感じです。

当然元がエロゲなので、主人公の涼崎は「女に手が早い」というお約束な設定になってます。入れ食い状態です(笑)

事件が進むに連れて、猟奇殺人事件の真相と涼崎の失われた過去の記憶に関連性があることがわかって来て…、という感じです。

☆ダブル主人公

このゲーム、PC版をプレイした時はかなり混乱しました。

何故なら主人公にあたる人間が涼崎と草薙の二人だからです。

基本的にテキストは草薙か涼崎の一人称の視点で書かれているために、当然場面によってくるくる笑顔がやっぱイイ!じゃなくて、入れ替わります。

曰く、「マルチ・パースペクティブ」(複数の視点)らしいのですが、かなりわかりづらいんですよね。

なので、読んでて「はぁ!?」という場面がたくさんありました。
(もちろん一人称が入れ替わっても画面的に特殊な演出(文字色が変わるとか)とかは全くナシです)

まぁ、大抵は二人が一緒の時は草薙、それ以外の場面では涼崎、という区分でいいんですけど、いらぬ混乱を招いていたことも事実です。

その点で、サターン版は「ボイスの追加」ということで幾分その混乱が軽減されています。
こういう恩恵もあるのですね。

ただし、ボイス追加による弊害がないというわけでもありません。

有名俳優を脇に起用したドラマなんかでよくあるように「キャストで犯人がわかる」んですね(笑)

そのキャラは登場するなり怪しいので、そうでなくても察しがつくんですけど、誰が声をやっているかで一発でした。
(純粋に初プレイでもわかると思います)

こればっかりはどうしようもありませんけど、なんかもったいない気がします。
誰が悪いワケでもないんですが。

ストーリー後半、みんなでアメリカに行くのですがそうなるとボイスもほとんど英語になります。
これはビビりました(笑)

しかも全員流暢な英語操ってるので、かなりのインテリみたいです。

駅前留学してる場合じゃないネ!

☆まとめ

ゲームとしては純粋に「ストーリーを楽しむ」タイプのADVです。

タイトルが「黒の断章」なくらいですから「ネクロノミコン」の知識があればより楽しめると思いますが、知らなくても全く問題ありません。
(実際私も名前くらいしか知りませんでしたし)

PC版は個人的に優秀なエロゲと判断する要素、「出てくる女キャラに全員Hシーンがある」を満たしていたのですが、サターン版はごっそりもって行かれているのでちょっとさびしいです。

なまじCGのクオリティが向上してるだけに「これでエロを!!」と思ってしまうのはやはり男子中学生だからでしょうか?(笑)

なお、PC版では「涼崎探偵事務所シリーズ」として続編の「Esの方程式」が出ています。
3作目にあたる「人工失楽園」は残念なことに開発停止状態だそうで。
(「Esの方程式」も面白いので是非プレイしてみてください)

この手のハードボイルド探偵モノとエロってのは相性がいい(笑)ので、是非とも新作に期待したいですね。サターン関係ないけど。

でも、主人公的扱いなのに「草薙」にファーストネームが設定されてないのはあんまりな気がします。

(文責:オグさん)

(「習慣!ゲーム微妙 01/06/30号」掲載分より加筆修正)

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