[主な登場人物]
由美子先生:
熱いハートと絶妙なプロポーションを持つ謎の女教師。
実は宇宙からやってきた、というオチにしようかと思ったが、面白くないのでやめた。
だってそれじゃ「おね(以下略)」。
浩一くん:
相変わらず受難の日々が続く中学三年生。
果たして無事に高校に進学できるのか!?
氷室裕:
・・・・・・・・・・・・・・・・・・で?
アポロントラングー:
収納される不要部分が最も多そうな胸部パーツ。
前回までのあらすじ
突然な展開に誰もついてこない罠。
<<第7話 見よ!暁の二段変身!!の巻>>
前回の最後で謎の白い光に包まれた(はず)の浩一くんが意識を取り戻したのは、やはり部室でありました。
「……う、う〜〜ん」
窓の外からは春のやわらかな陽射しが降り注いでいます。
「………え?」
完全に意識を取り戻した浩一くんが腕時計をみると、そこにある日付は…。
「って、もう4月になってるじゃん!!」
見事に春休み最後の日でした。
「な、なんで2週間近くも放置されてんだ僕?」
その理由はまだわかりませんが、とにかく一度うちに帰ろうとしたその時!
「ラッタッタ ラッタッタ ラッタッタラッタゴッドマーン
ラッタッタ ラッタッタ ラッタッタラッタゴッドマーン♪」
聞き覚えのある歌声が廊下の方から響いてきたので、浩一くんは思わず部室を飛び出します。
「ゆ、由美子先生!!」
「え!?」
いきなり現れた浩一くんに驚いたのか、由美子先生の表情は困惑気味です。
「……って今の歌、聴いてた?」
恥ずかしそうにたずねる由美子先生でしたが、今の浩一くんにはそんなことはどうでもよかったのでした。
「由美子先生! いったいぜんたいどうしちゃってくれたんですか?」
「え?……あ、あの…」
「ていうかなんでもう4月になってるんですか? 何したんですかいったい!?」
「あ、あの……」
浩一くんの矢継ぎ早の質問攻めに、珍しく由美子先生がひるんでいる様子。
「……あ、あのさ?」
「はい?」
「ていうか、きみ誰?」
怪訝そうな表情で由美子先生がヘンなことを訊いてきます。
「またー!悪い冗談はやめてくださいよ由美子先生〜」
「いや、ホントにきみ誰? それになんで私の名前を知ってるの?」
「いやだなー、またそういうふうにして……って、ええええええええええええ!?」
由美子先生が真剣に自分のことを知らないという事実に愕然となる浩一くん。
「って、ホントにわからないんですか?」
黙ってうなずく由美子先生。
「ふ、古見浩一ですけど?」
残念そうに頭を振る由美子先生に、改めて愕然となる浩一くんでありました。
……。
…………。
………………。
「なるほどね」
由美子先生に今までの経緯を全部話した浩一くんでしたが、実際自分でも自分の身に何が起こったのか、ということについてはまだわからないことばかりでした。
「つまり、きみはわたしじゃないわたしを知っている、ということね?」
「……多分、そういうことになるんだと思います」
浩一くんにとって一番驚愕の事実だったのが、今いるこの時間が4月は4月でも、以前いた時間軸での4月ではなく、それより1年前、つまり由美子先生と知り合う直前の4月ということでした。
「これっていわゆるタイムスリップってやつなんでしょうか?」
「わたしに聞かれてもねぇ……。でもきみがウソをついているとも思えないし……」
そういって由美子先生は口を閉じました。
生じた事態に対しどう対処するべきか思案しているようでした。
(……いつもこんな真面目な由美子先生だと非常に助かるんですが……)
思案顔だった由美子先生の表情が、突然何かを決意した顔に変わります。
「とにかく!」
「はい??」
「きみにはこれをプレイしてもらいます!!」
由美子先生が白衣から取り出したのは「韋駄天いかせ男 言葉でいかせて」。
「って、結局いつもと同じ展開かよーーッ!!」
浩一くんは泣く泣く「韋駄天いかせ男」をプレイしはじめます。
(うわー、北爪宏幸くさい絵〜)
いきなりマニアックな感想を抱く浩一くんでしたが、ゲームは実は鬼のような難易度だったりします。
このゲーム、いわゆる「いだてん文」(何が、何に、どうした)という文節の組み合わせで文章を作って、ギャルの快感度を上げていくというゲームなのですが、各文節に当てはまる単語が100種あります。
……ということは単純に100×100×100=100万通りの組み合わせがある中から、ギャルが感じる文章を探し出さなければならないということです。
それで出来上がる文章といえば
「引っ越し用のビニールの粒々を 全国の人に とろけさせる」
「ABCを レゲエに あえがせる」
など、全く意味のない文章だったりするのですが、これでなぜか快感度が上がったりするから不思議。
「……なんなんだよこのゲーム」
この理不尽な組み合わせに憤りを覚える浩一くんでしたが、目の前に山があると登らずにはいられない性格が災いして、ひたすら組み合わせを変えてチャレンジします。
その間の由美子先生はというと、ポケットから取り出した「バーミン」をカンストさせたりしていました。
「あ、画面変わった」
このゲーム、ギャルの好感度がある程度まで行くと画面が変わるようです。
にしても相変わらず好感度の上がる文章といえば、
「万年筆を 犬小屋で つなぐ」
「蜂蜜を サラリーマンのゲロで むしりとる」
など、全く意味のわからない組み合わせばかりです。
そんな無意味な組み合わせの中にも、浩一くんは規則性を見出すことに成功します。
「そうか、反応する数字は+4ごとなんだ……」
要するに「01 02 03」という組み合わせがヒットした場合、このどれかに+4した状態「01 06 03」や「04 06 03」でもヒットするということです。
このパターンさえ発見してしまえば、あとは黙々と数字を入れ替えていくだけの作業に。
最初は全然上がらなかった快感度のメーターがぐんぐん上がっていきます。
そしてついに100%になり、無事ギャルをイカせることに成功しました!
「よっしゃ、ひとり目クリアー!!」
といってもこのゲームには6人のギャルが登場し、最後の一人「麦子」をクリアするためには、他の5人を全員クリアしてパスワードを集める必要があります。
ですが、この法則さえマスターしてしまえば後は完全な作業。
黙々と数字を入れ替えて、見事麦子をイカせて完全クリア達成です!
「やりましたよ、由美子先生!!」
振り返るとそこに由美子先生の姿はありませんでした。
「由美子先生?」
部室を見回しても、やはり白衣姿の由美子先生は見当たりません。
「??」
パパン!パン!パパパン!!
パン!パパパパン!!
突如鳴り響く爆竹およびクラッカーの音に、浩一くんは度肝を抜かれます。
「卒業おめでとう、浩一くん!!」
いきなり現れた由美子先生はなぜかウェディングドレス姿。
(……またなんかのコスプレかよ……)
不吉な予感が脳裏をよぎる浩一くんでしたが、由美子先生の瞳は真剣でした。
「私と浩一くんでこれから愛のスターシップランデヴーよ!」
「って、由美子先生、意味が全然……」
「ウェディングお色直し!!」
そんな浩一くんにはまったく構わずに、由美子先生はウェディングドレス姿から、なぜか半裸に近い謎の戦闘服姿に。
「……ミ、ミルクで乾杯!?」
呆気にとられまくりな浩一くんをヨソに、由美子先生は浩一くんの腕にしがみついてきました。
「ごめんね」
「え?」
「さっきの全部ウソ」
「え!? えーーーっ!???」
思わせぶりな前振りではじまったのに、と動揺を隠せない様子の浩一くんでしたが、すべてを理解すると表情が一変しました。
「こ、こんなオチ許せるか! うがーーーーーーーーーーーっ!!!」
浩一くんの秘めたる力がついに発動し、いつの間にか手にしたトゲつき鉄球を振り回して大暴れ。
「ゴーーーーーッドクラーーーーーーーーーーーーシュ!!!!」
「わー!きゃー!!」
鉄球をブンブン振り回しながら追いかける浩一くん。
楽しそうに叫びながらそれから逃げる由美子先生。
…………このふたりはこれからもこんな感じなのは間違いないでしょう。
(第一部 完)
(後日談)
この時、浩一くんが暴れまわって部室の機材の98%を壊してしまったため、結局歴史あるパソコンクラブは存続が不可能となりました。
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