[主な登場人物]

由美子先生:
どういう経緯で教師になったのか、まったく謎の女教師。
本当の趣味はトローリングで、尊敬する人は松方弘樹だったりする。

浩一くん:
受験も無事終わり、見事進学を決めた中学三年生。
キルヒアイスの突然の死にちょっとまいり気味。

ファンキー・クボタ星人:
YO!メ〜ン! おいしいウインナーには音がある

ケンちゃんラーメン:
ずっと新発売


前回までのあらすじ

ロープで縛ってハンマーで殴って袋小路でレイプマン。


<<第6話 悔しいけれどお前に夢中!の巻>>


無事高校進学も決まり、あとは卒業を待つだけとなった浩一くん。

「由美子先生は大丈夫っていってたけど……」

いまだに新たな部員が増えそうにないですが、卒業に備えて部室の掃除をはじめました。

「あ、こんなところに『モピレンジャー』のカートリッジが」
『夢幻戦士ヴァリス』だ、しかもパッケージだけ……」
「これなんか全然使われてない新品同様のぴゅう太Jrだよ!」

……一体ここには何がどれだけあるのか見当もつきません。

「これはヘタにいじらないほうがいいな…」

結局そういう結論に落ち着いた浩一くんは、いつも使っている88MkUFRのキーボードを掃除することにしました。

「結構ホコリとかたまるんだよなー、キーボードって」

そこへ、廊下のほうからまた変な歌声が聞こえてきます。

「六つの誓いが今〜 一つの希望になる〜
 光の速さで歩け〜♪

……歩けねぇよ。

思わず心の中でツッコミを入れる浩一くんのことなどお構いなしに、由美子先生がやってきました。

「浩一くん浩一くん!」
「……だから名前二回呼ぶのやめてくださいよ」
「ずっと探してたアレが手に入ったのよ〜」

どうせまたロクでもないもんなんだろうな、とあきれつつも興味がないわけじゃない浩一くん。

「これよ!『ペンギンギン』!!

そういって由美子先生が差し出したのは、いつもとは違うLSIゲームでした。

『ネコドンドン』『ロボットメーカー』は随分前に手に入れてたんだけど、これだけなかなかみつからなかったのよねぇ〜」
「まあ『ネコドンドン』はわかるにしても、『ペンギンギン』ってタイトルはちょっとはっちゃけすぎじゃないですか?」
「そこがまたいいのよ〜。ん〜、最高!バカ丸出し!!」

こういうときの由美子先生は本当にうれしそうな顔をします。

こんな顔の由美子先生を見られるのもあと少しなんだなー、とか思うとちょっとフクザツな気分になる浩一くんでしたが、そんな気分はこの後一瞬にして吹き飛ぶことになります。

「ついでにコレも手に入ったからね〜、はいプレイ開始〜!」

慣れた手つきでドライブにフロッピーを入れると、有無を言わさず浩一くんを88の前に座らせます。

「……なんでKIND GAL'S『カインドゥギャルズ』になるんですか?」
「それはギャランドゥとかザナドゥとかそういうのが流行ってる時代だったからよ!」

かなり適当な説明でごまかされた気がしないでもありませんが、なんとなくタイトル以外でもこのゲームには痛い目に遭わされそうなので気にしないことにします。

浩一くんがなぜそう感じたのかというと、パッケージに「HARD」の文字を発見していたからです。

というより、6回中3回もHARDのゲームに頼りすぎなこのコーナーの姿勢をどうかと疑問を感じざるを得ない浩一くんなのですが、実際それくらいの破壊力のあるメーカー(FCでいうとビック東海くらい)なので気にしないでください。(一応アンケートの結果によってはいるのですが)

「それにこれ、『口説き方教えますII』ってなってますけど?」
「あー、一応これ続編なのよ。といっても前作と同じようなシステムってだけなんだけど」
「前作と同じようなシステムって、この単語の穴埋めがですか?」

そうです。このゲームは
「へーい彼女、○○してる?僕とお茶しません?」
の「○○」に当てはまる正しい文字を入れられれば先に進める、というタイプのゲームなのです。

そのシステムで2本ゲームを作っちゃうHARD。
やはり侮れません。

「これ、まだ2文字ぐらいだといいですけど5文字超えると途端何がなんだかわからなくなりますね…」

一応ESCキーを押せば1文字ずつヒントが表示されるんですが、当然のヒント数にも制限があるため、やたら使うわけにはいきません。

「……ていうか難しすぎますよコレ! あ、ゲームオーバーになっちゃった……」

このゲーム、ヒントを使いすぎるとゲームオーバーになります。
ただし、そのシナリオが終了するだけで、自動的に次のシナリオに以降することになります。

プレイしていた『ペンギンギン』を中断し、無言でリセットボタンを押す由美子先生。

「わかりました。やり直しますって…」

やり直しても入力すべきキーワードはまったく変わらないので、一度がわかってしまえば実は簡単にクリアできるゲームだったりするのです。

「由美子先生?」
「何?」
「『あやよさん』のときもそうだったんですけど、なんでこれBGMがグリーンスリーブスなんですか?」
「知らないわよ」

『ペンギンギン』に夢中な由美子先生は投げやりに答えます。

「悲愴」といい、「グリーンスリーブス」といい、HARDのBGMは気合が入っているのか何も考えていないのかホントによくわかりません。

少なくともナンパのBGMにグリーンスリーブスはかなり不釣合いだと思います。

「でも相変わらず画面がアニメするのは頑張ってますね」

浩一くんのいうように、このゲーム結構動きます。
といっても基本的には単純な描き替えによるアニメですが。

「やっぱ一回失敗してるとサクサク進むなー」

あっという間に最初のシナリオ「口説かれ方教えます」をクリアしてしまった浩一くん。
ものすごい淡白なHシーンに呆然とする間もなく、次のシナリオ「素敵なおじさま」がスタートしました。

一方由美子先生はというと、まだ『ペンギンギン』に夢中のようです。

「プレイヤーの立場は変わっても名前は同じなんだなー」

このゲーム、最初に名前を入力させられるのですが、浩一くんが適当に入力した「ぼんばいえ」という名前が最初のナンパ少年と次の単身赴任のおじさんで一緒というのはかなり滑稽でした。

「ヒントさえ使い切らないようにすれば、結構簡単にクリアできるなー」

ちなみに画面下のメッセージウィンドウに表示される○の数と、入力ウィンドウの文字数が違うことがありますが、その場合は必ず濁点が使われているのでいいヒントになります。

基本的には名詞ですが、たまに形容詞や副詞が入ったりするので、いかにどういう単語を要求してるのかを読み取るセンスも要求されます(というより一度失敗して答えを知ればいいだけの話ですが)。

浩一くんは、雨宿りで偶然知り合った女の子と結局最後はなんだかんだでヤってしまう「素敵なおじさま」も順調にクリア。次の「甘い誘いにご用心!!」は途中でオチがわかってしまい、萎えながらもなんとかクリアしました。

「ナンパものの話だと絶対あるんだよなー、実は相手が男だったオチ……」

その間も由美子先生は何かにとりつかれたかのように一心不乱に『ペンギンギン』をプレイしています。

(……そんなに面白いのかな、『ペンギンギン』?)

鬼気迫る由美子先生の姿を見てそう思う浩一くんでしたが、これをクリアしないことには解放してもらえそうにないので、とっととクリアしてしまうことにします。

4つめのシナリオ「ナンパするのも、命がけ?」は、バイクに乗ったギャルをナンパするお話でしたが、他よりも短かったのであっさりクリアしてしまいました。

「どうやらこれが最後のシナリオみたいなんだけど……」

最後の「リアルタイム・ティーチ」はウブな女子高生をナンパしてヤっちゃう話でした。

「……最後に鬼畜シナリオじゃん。やるなぁ」

初めてで痛がる女子高生に容赦なく襲い掛かる姿は、見ている浩一くんが痛々しくなるほどでしたが、なかなかのエロさでした。

「浩一くんはこんなことしちゃだめよ」
「ゆっ、由美子先生、いつの間に!」

さっきまで『ペンギンギン』に熱中していたはずの由美子先生が、なぜか上着をはだけた状態で浩一くんの後ろに立っていました。

「とっ、ととにかく服着てくださいよ!服を!!」
「でも、浩一くんがそうしたいなら、いいのよ……」
「いいのよ、って、よくないですってば!!服着てください!」
「あーもー、浩一くんのいけずぅ〜」

珍しく言われたままおとなしく服を着る由美子先生。
でも、由美子先生は浩一くんもペンギンギンになっていたのは見逃していませんでした。

「あ」
「どうしたんですか?」
「そういえばすっかり忘れてたけど、このクラブは4月から廃止だから」
な、なんだってーー!!

某MMRのように驚く浩一くん。

「でも、由美子先生は大丈夫って言ってたじゃないですか!」
「そうね」
「じゃあどうして……」

その問いには答えず、由美子先生は不敵な笑みをたゆたえています。

「由美子先生!?」

長い沈黙の後、由美子先生の唇がゆっくり開かれました。

「浩一くん」
「……なんですか?」
「これがなんだかわかる?」

いつのまにか由美子先生の掌には水晶球のようなものが乗っています。

「水晶……の球ですか?」
「これをどう使うかはわかる?」
「そっ、そんなのわかるわけないじゃないですか!」
「……こうするのよ」

由美子先生がそういった途端、水晶球は突如としてまばゆい光を発しました。

「うわっ!」

あまりの明るさに目を覆った浩一くんでしたが、光はさらに強さを増していきます。
視界が完全に真っ白になった瞬間、浩一くんは意識を失ってしまいました。

「これで、大丈夫……」


(本当に続くのかわからないまま次回につづく)


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